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【ベンチャー企業の法務心得 2】クレア法律事務所 代表弁護士 古田利雄

会社名や組織名・役職・内容につきましては、取材当時のものです。

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株主の正しい運営の仕方


(企業家倶楽部2010年6月号掲載)

 過去には、株主からの質問が全くなく、議案に賛成する拍手だけが鳴り響くシャンシャン総会がよいとされた時代もありました。しかし、21世紀型の株主総会は、株主とのコミュニケーションの場としての意義が強調されており、統計的にみても、映像を使ったプレゼンテーションを行う企業が増え、総会時間も長時間になってきています。個人株主の増加によって、会社に対して様々な質問がなされるケースも増えてきました。

 上場会社の場合は、いわゆる証券代行会社が、株主総会の進行について詳細なアドバイスをしていますが、上場していない会社でも、株主総会をきちんと行うことは、決議が取り消されるというリスクを回避するために必要です。のみならず、公私の境がグレーになりがちな中小企業こそ、きちんとした株主総会を行うことは、会社の体質改善と株主との関係維持に積極的な効果を期待できます。

 株主総会の議事進行が適切になされなかった場合、株主は裁判所に対して、株主総会決議の取消を求める訴えを起こすことができます。

 例えば、株主から、取り上げなければならない動議が提出されたにもかかわらず、その動議を議場に諮らなかったり、回答しなければならない質問に回答しなかったりすると、会社法の定める取消事由にあたることになります。

 それでは、何が取り上げなければならない動議で、何が回答しなければならない質問でしょうか。まず、動議についていえば、取締役会のある会社の場合、株主は総会当日に新たな議案を動議として提出することはできず、選任する取締役の数を減らすような修正動議しか提出できません。修正動議が提出されたとき、議長は会社の提出議案とともに採決することができ、会社側提案が可決されれば動議は否決されたものとして扱えます。

 また、株主は、総会の運営手続に関して、議長不信任、総会の延期等の動議を提出することができます。議長は、これらの動議が提出された場合には、その都度、会場に諮らなければなりません。

 さらに、株主は議案を理解して議決権を行使するために必要な範囲で、議案について質問をすることができます。この質問権の裏返しとして、会社は質問された事項について回答しなければなりません。その解説も、一般的な株主としてその議題に議決権を行使することができる程度におこなう必要があります。例えば、退任取締役に会社所定の基準に従って退職慰労金を支給するという議案に対して、「会社所定の基準とはどのようなものか」と質問されたときは、会社はその基準の内容について説明しなければなりません。

 ただし、回答することによって、株主共通の利益を著しく害する場合や正当な理由があるときは、回答を拒むことができます。したがって、営業秘密の開示を求められた場合などは説明する必要はありません。 
 実務的には、株主総会における会社の回答が不十分であるという指摘を受けないようにするために、株主総会の後に株主懇談会の時間をとって、質問に対する説明義務の範囲を超える部分については、株主懇談会で説明するのが適当です。

Profile

古田利雄

ベンチャー企業の創出とその育成をメインテーマに、100社近い企業の法律顧問、上場会社の役員として業務を行う傍ら、ロースクールで会社法の講座を担当している。平成3年弁護士登録。東京弁護士会所属。

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