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【ベンチャー企業の法務心得 10】クレア法律事務所弁護士 佐藤未央

会社名や組織名・役職・内容につきましては、取材当時のものです。

企業家倶楽部アーカイブ

独占禁止法の課徴金の減免制度

(企業家倶楽部2011年10月号掲載)

 近年、経費節減等の理由により、従来は社内の従業員が行っていた業務を、外部の個人事業主と委任契約・請負契約を締結してアウトソーシングする事例が増えていますが、当該受任者・請負人が、労働基準法をはじめとする各種の労働法上の「労働者」に該当するかを巡ってのトラブルも増加しています。

 今回ご紹介するのは、ある企業の一定の業務を専属的に処理する外部受託者が、労働組合法上の「労働者」(職業の種類を問わず、賃金、給料その他これに準ずる収入によって生活する者(労働組合法3条))に該当するかどうかが争われた事案です。

 住宅設備機器の修理補修等を業とするA社は、A社と業務委託契約を締結して修理補修業務に従事しているカスタマーエンジニア(CE)が加入した労働組合から、CEの労働条件の変更等を議題とする団体交渉の申入れを受けました。

 A社は、CEはA社の労働者ではないとして申入れを拒絶しましたが、大阪府労働委員会は、A社の対応は不当労働行為に当たるとして、A社に対し、団体交渉に応ずべきこと等を命じました。

 これを不服としたA社は、中央労働委員会に対して再審査の申立てをしましたが、これを棄却するとの命令を受けたため、その取消しを求めて訴訟を提起したというものです。

 最高裁は、以下の「諸事情を総合考慮すれば、CEは、A社との関係において労働組合法上の労働者に当たると解するのが相当である」と判断しました。

1 A社は、CEをライセンス制度等で管理し、担当地域を割り振り、業務日を指定するなどしており、CEは、A社の事業の遂行に不可欠な労働力として、その恒常的な確保のためにA社の組織に組み入れられていた。

2 CEとA社との間の契約内容は、A社の定めた覚書によって規律され、A社が一方的に決定していた。

3 CEの報酬は、その決定方法に鑑み、労務の提供の対価としての性質を有する。

4 CEがA社の修理補修等の依頼について承諾拒否を行っても債務不履行責任を追及されることはなかったが、当事者の認識や契約の実際の運用においては、CEは、基本的にA社による個別の修理補修等の依頼に応ずべき関係にあった。

5 CEは、A社の指定する業務遂行方法に従い、その指揮監督の下に労務の提供を行っており、その業務について場所的にも時間的にも一定の拘束を受けていた。

 会社が個人事業主との間で委任契約・請負契約を締結したとしても、当該委任者・請負人が労働法の定める「労働者」と評価された場合、労働基準法や労働組合法などの適用を受けることになります。その結果、会社側からの契約の解除が「解雇」となり、「客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上の相当であると認められない」場合は無効となる(労働契約法16条)など、思わぬ負担が発生することになります。

 今回の最高裁判決は、「労働者」に該当するための要件や基準を一般的に定立したものではありませんが、労働組合法上の「労働者」の判断要素とともに、当事者の関係の実態に即して判断を行う必要性が示されました。また、最高裁が示した判断要素は、契約書の作成や委任者・請負人との関り方を検討するうえでも参考になります。
※参考にした裁判例:INAXメンテナンス事件(最高裁平成23年4月12日判決)

Profile 佐藤未央(さとう・みお)

システム開発系の企業におけるシステムエンジニアとしての8年間の勤務を経た後、弁護士となる。現在は、主に、ベンチャー企業に対する会社法・金融商品取引法を中心とした法的アドバイスの実施や各種契約書の作成、労働問題などを担当している。平成19年弁護士登録。東京弁護士会所属。

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