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【視点論点】

会社名や組織名・役職・内容につきましては、取材当時のものです。

編集長がゆく!

松下村塾を訪ねて

松下村塾を訪ねて

新年あけまして、おめでとうございます。 コロナも4年目に入りました。いよいよコロナの終わりの始まりだと私は考え、昨年から定例会を再開し、11月29日は3年ぶりに企業家賞を開催致しました。
今年は新拠点である木場ベンチャーパークを本格稼働させていきます。具体的には、次世代企業家の発掘と企業家精神教育です。若い世代に向けに企業家精神を伝えるに当たり、訪ねておきたい場所がありました。
年末に福岡県門司港まで行く機会があり、関門海峡を渡り山口県萩市にある松下村塾まで足を延ばしてきました。松下村塾は江戸時代末期に長州藩に実際にあった私塾です。
思想家・教育者である吉田松陰が塾長として指導した僅か2年余りという短い期間にもかかわらず幕末から明治維新にかけて実に多くの人物を輩出したことで知られています。
私は物事のルーツを辿る旅が好きです。まだ20代前半の頃、父にベンチャーのメッカはどこかと聞くと、「それはやはりシリコンバレーだろう」ということでした。
いてもたってもいられなくなり、HISでサンフランシスコまでの航空券を買い、ハーツレンタカーで車を借り、スタンフォード大学近くにあるヒューレットパッカード(HP)の創業の地である有名なガレージを訪ねました。
余談ではありますがこのガレージ近くにアップル創業者のジョブズの自宅もあります。住宅地の中にある何の変哲もない小さなガレージから世界企業が誕生したのだと感動した気持ちが今までベンチャーに携わってきた私の原体験になっています。
今回の山口県萩市への旅も25年前のあの感動が蘇ってきたような感覚を味わいました。日本海側にある萩市は前日まで寒波が来ており雪が降っていたそうです。しかし、翌日には嘘のように快晴で青空と山々の緑のコントラストが美しく目に映りました。
松下村塾の講義室は僅か8畳一間から始まったのです。その後、塾生が増えて手狭になったため松陰と塾生らで10畳半を増築したとあります。実際にその建物を見てきましたが、本当にここで数十人の若者が集まって喧々諤々と学んでいたのだろうかと思うくらい狭い空間でした。
そして、大切なのは立派な建物ではなく、学ぼうとする生徒の気持ち、社会を変えようと思う「志」なのだと心に刻みました。
明治改元(1868年)から150年の節目となる2017年12月18日に「自立学習の祖」と記した吉田松陰先生顕彰碑が建立されました。同じ敷地内に松陰神社があり、鳥居に続く小径には松陰が残した名言を記した碑が建てられています。
その中に「知は行の本なり。行は知の実たり。(知識は行動の本である。正しい行動は深い知識や理解によって実現するものである)」という言葉が胸に刺さりました。松陰は知識欲旺盛で幼い頃より父や兄と畑仕事をしながら、四書五経を素読したそうです。
また、松下村塾は武士や町民の区別なく受け入れ、一方的に師匠が弟子に教えるものではなく、松陰が弟子と一緒に意見を交わし、文学だけでなく登山や水泳なども行うという「生きた学問」だったといわれています。
木場ベンチャーパークも参加者が意見を交わす同じスタイルで行こうと考えています。人は教えるときに多くを学ぶと言います。探求型学習で若者に精神的に自立することを促し、挑戦する勇気、企業家精神の尊さを伝えていきたいと思います。

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