会社名や組織名・役職・内容につきましては、取材当時のものです。
●前列左から4人目 優勝したハドラスホールディングス社長 山本英明氏
前列右から3人目 2位に輝いた Payment Technology代表 上野亨氏
前列左から3人目 3位に輝いた HAPPYPRICE代表 小林裕昌氏
前列右から2人目 3位に輝いた ペイトナー(旧yup)社長 阪井 優氏
東京ニュービジネス協議会(以下NBC)がスタートアップ支援を加速している。2022年3月3日、東京・日本橋のオルクドール・サロンTOKYOで「第7回スタートアップ・メンタリング・プログラム」が開催された。
この日は2021年度3回の予選を勝ち抜いた7社のスタートアップ企業経営者が集結、決勝大会に臨んだ。いずれも時代の先陣を切る新技術や新しいアイデアで急成長を遂げている企業ばかりだ。勝者にはシリコンバレーでのアクセラレーションプログラム参加の機会が授与される。
NBC主催、fabbit大手町の協力の元、 この日はSBI証券、SMBC日興証券、香川証券、東海東京証券、野村証券が協賛に加わった。スタートアップ企業をより確実に、具体的にIPOに導くために、2021年11月からIPOスクールもスタートさている。ここにNBCのベンチャー支援活動の本気度が見えてくる。
決勝大会へのエントリーは以下の7社である。
Natee 代表 小島領剣氏
ペイトナー(旧yup)社長 阪井 優氏
Payment Technology代表 上野亨氏
HAPPYPRICE 代表 小林裕昌氏
ハドラスホールディングス 社長 山本英明氏
クォンタムオペレーション 代表 加藤和磨氏
BitStar 社長CEO 渡邉 拓 氏
18時きっかりに会は始まった。モデレーターはNBC副会長で、このアントレプレナー創出委員会会長の青木正之氏である。決勝大会とあって主催者の青木氏も興奮気味だ。
2年前からNBC会長を務める井川幸広氏は、「本日発表する7人は、選りすぐりの強者ばかり。誰が選ばれてもおかしくない。シリコンバレーを目指して頑張って頂きたい」とエールを送った。
この「スタートアップ・メンタリング・プログラム」は審査員・メンターの顔ぶれが豪華だ。
クリーク・アンド・リバー社社長、NBC会長の井川幸広氏、Ubicom ホールディングス社長青木正之氏、エアトリ会長 大石崇徳氏、識学 代表取締役社長 安藤 広大氏、システムソフト副社長 田中保成氏の5名だ。いずれも上場企業の経営者だ。こうした錚錚たる顔ぶれを揃えられるのも、NBCならではといえる。
この日は会場に50人、そしてリモート参加者200人が、決勝大会を見守った。
持ち時間は一人7分だ。7分間で自社のすべてをプレゼン、審査員の評価を得る。
緊張感が高まる中、7人のピッチが繰り広げられる。どの顔も熱心で、時間いっぱい自社の特長、将来への展望を熱く語る。審査基準はビジネスモデル、革新性、成長性など5つの項目で、5点満点で評価する。
その結果、1位に輝いたのは、ハドラスホールディングス社長 山本英明氏である。2位には Payment Technology代表 上野亨氏。3位にはHAPPYPRICE 代表 小林裕昌氏とペイトナー(旧yup)代表 小島領剣氏の4名が選ばれた。
受賞者のプレゼンの一部を紹介しよう。ハドラスホールディングスは「脱炭素社会へ向けて「常識を塗り替える」をモットーに、ナノテクノロジー研究開発ベンチャーとして、高純度超薄膜ガラスコーティング剤を世に送り出す。
独自の高純度Nanoレベルガラスコーティング剤(HardoLass)の研究開発、製造・販売をグローバルに展開。コロナ禍ということもあり抗菌塗料は世界的に関心が高い。トヨタの新車のハンドル、セブン銀行の25000台のATMに採用されている。また、スペインの高速鉄道、病院などにも採用。
将来的には航空機にコーティングすれば、空気抵抗の減少を実現、省エネ対策にも役立つという夢のような塗料だ。しかもこのコーティング剤は歯にも使えるということで、デンタル分野など、ヘルスケア分野にも活用できるという。抗菌、省エネ、ヘルスケアなど、世界の課題に応える高純度超薄膜ガラスコーティング剤への期待と今後の可能性も含めて1位に輝いた。
2位になった「Payment Technology」は、審査不要の売掛保証BtoB 決済後払いサービス「1month delay payment」を開発・提供している。「これを使えば1か月、最大53日の後払いが可能となる。手数料は利用額の5.5%。2021年4月からサービスを開始しているが、300社が利用、利用金額も上がっている。ビジネス特許申請中と上野氏。
HAPPYPRICEは、ブランド品の輸入・買取、卸、販売や業者向けオークションなどを手掛けている。ブロックチェーンを活用、安心安全なブランド品を提供するSaaSプラットフォームを展開。「世界のリユース市場のDX化を加速したい」と高らかに宣言。
ペイトナー(旧yup)はオンライン型ファクタリングサービス「先払い」を実現する。今1670万人いるとわれるフリーターにとって、少しでも早い入金が生活の安定につながる。しかし、請求から支払いまで60日ぐらいかかるのが現状だ。この課題解決に乗り出し「先払い」サービスを展開している。最短60分で報酬が受け取れるサービスは画期的だ。
(左からUbicom ホールディングス社長 青木正之氏、 クリーク・アンド・リバー社社長、NBC会長 井川幸広氏、 ボードウォーク・キャピタル社長 CEO 那珂通雅氏)
集計の間、審査委員兼メンターの青木氏、井川氏そしてボードウォーク・キャピタル社長 CEO 那珂通雅氏の3人の講評・鼎談が行われた。
「ハイレベルな会社ばかりで甲乙つけがたい」
「どの会社も予選大会から業績を伸ばし成長しているのがスゴイ。すぐにもIPOできそうだね」、メンターたちの温かい言葉がこの大会の持ち味だ。
プログラム終了後はリアルの参加者も交えての名刺交換会となった。
どの顔にも満足そうな笑顔がこぼれる。
コロナ禍とはいえ、会場は熱気に包まれ、ここだけ別世界という雰囲気であった。
モデレーター青木氏のこの大会に賭ける情熱が、そして何よりも審査員・メンターの面々の、厳しくも温かい眼差しが、大会の成功に拍車をかけている。2022年度はどんなチャレンジャーが出てくるのか今から楽しみだ。
NBCが東証や証券会社と連携して11月からIPOスクールがスタートした。本気でIPOを目指す会社をきっちり指導するというのだ。すでに25社が学んでいる。入塾するには審査があるというが、ビジネスモデルのブラッシュアップ、株価形成指導、マーケティング指導、資本政策、CFOや監査役の紹介など至れり尽くせりだ。
NBCのプログラムは、スタートアップの資金調達、ビジネス創成などの機会を提供、後進育成に注力したいとの意向で、2019 年度にスタートした。自ら起業 上場を経験した創業経営者や VC 等がメンタリングを行うのだからスートアップ経営者にとっては心強い。「ファイナンス」「メンター」「アライアン ス」などについて、支援するサポーターとのビジネスマッチングの機会ともなっている。
ピッチ企業のエントリーは公募で、ビジネスモデル、マーケットサイズ、事業計画、マーケットにおける強み、今後のマイルストーンなどを、NBC会員経営者や大学教授などが綿密に審査するという。
日本でも最大級の経営者のネットワークで、創設35年の歴史を誇るNBC、東京NBCは今会員450人、全国では4000社に上る。アントレプレナー創出委員会を設置、本格的に若手起業家支援に取り組んでいる。井川氏は「これからは我々企業家が起業家を育てる役目、日本を元気にしていきたい」と語った。ここから新たなIPO企業が続々誕生すると思うとワクワクする。こうした地道な活動が日本中に広がり、日本がアントレプレナー大国となることを期待したい。
(三浦)