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【注目企業】
サイクラーズ 代表 福田 隆 

会社名や組織名・役職・内容につきましては、取材当時のものです。

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「サーキュラーエコノミー」を追及し地球の未来に貢献したい

「サーキュラーエコノミー」を追及し地球の未来に貢献したい

今、世界は循環型社会構築に向けて大きく舵をきっている。しかし日本は廃プラスチックやエネルギー問題など、なかなか前に進まないのが現状だ。こうした中「サーキュラーエコノミー」の実現をミッションに掲げ、循環型社会構築に果敢に挑む企業がある。創業120年、資源活用を生業に躍進するサイクラーズ(旧名 東港金属グループ)である。代表の福田隆氏は、主力のリサイクル事業を柱にITを活用、静脈産業のDX化に力を注ぐ。福田氏が唱えるサーキュラーエコノミーとはいかなるものか、本音を伺った。


総合リサイクル企業として
問  2020年に東港金属グループからサイクラーズへと社名を変更、資源リサイクルに力を注いでおられますが、この業界はどのぐらいの市場があるのですか。
福田 資源リサイクルといってもどこまで入れるのかで変わってきますが、大体4兆円ぐらいです。
問   大きな市場ですね。その中で御社の強みはどこにありますか。
福田 リサイクルといってもいろいろありまして、各社分業していることが多く、それぞれ得意分野があります。中でも当社は120年の歴史がありますから、総合的にできることが強みです。
問  120年の歴史とはスゴイことです。そんなに前からリサイクルを手掛けていたのですか。
福田 創業者は元々薬剤師、医者の家系でしたが、明治35年、東京・神田に古物商を開いたのが始まりです。私は4代目となります。

開業時(1902年)の古物商許可証


問  120年も粛々と続けてこられたのですね。コロナ禍が長引いていますが影響はありましたか。
福田 業界的には不況に強い業種といえます。コロナ禍は追い風になった部分とマイナスになった部分があります。
問  プラス面とマイナス面どんなところですか。
福田 コロナ禍で生活習慣が変わったなどいろいろありますが、どんな状況下でも人が生活している限り、不用品はでます。とくに貴金属は資源高騰がありました。逆風だったところは、オフィスの稼働率が下がり、オフィス関連の不用品が出なかったことです。また半導体不足で自動車関連工場の稼働率が下がったこともあります。
問  サイクラーズグループとして幾つかの事業をやっておられますが、主力事業はどれですか。
福田 金属リサイクルが一番大きいです。中でも銅のリサイクルが全体の20%、鉄のリサイクルが15%を占めます。売上は2021年12月期で103億円です。
問  大きな商売をされているのですね。御社の強みについて詳しくお聞かせ下さい。
福田 資源リサイクル、リユース、金属廃棄物処理、建設廃棄物処理、廃棄プラスチック処理、リメイクなど総合的にできることです。 創業当初の神田から京浜島、今は千葉の富津に大きな処理場をもっています。廃棄物を処理するには場所が必要ですから。
問 処理場まで自社で持っているのは重要ですね。 長年の歴史の中でノウハウ、信用を積み上げてきたということですね。

28歳で4代目社長に
問  28歳と若くして社長に就任したとのことですが。
福田 大学を卒業後、5年ほど製造業やIT系の企業を経験し、家業に戻りました。ところが半年で父が急逝、社長を引き継ぐことになりました。
問  本来ならお父様からアドバイスを受け学ぶというところでしょうが、いきなり社長とは大変でしたね。
福田 若かったので勢いでやれたというところはあります。今考えると恥ずかしいこともありました。社長になって一番力を入れたのは営業活動です。まずは我々の価値を訴求し、リサイクルの幅を広げることに注力しました。
問  若くして社長になられて20年、リーダーとして大切にしてきたことは。
福田 実行力と当事者意識です。ビジョンを示し、戦略を錬ることも大切ですが、現場がわからないとダメで、両方のバランスが重要です。具体的には富津工場に1年間入り込んで現場を指揮しました。当時ドイツ製の機械を導入しましたがトラブルが多く生産性が悪かった。そこを改善し稼働率を上げました。
問  トップ自ら現場に入ったということですね。
福田 大卒後、部品メーカーである今のミネビアミツミに入社、工場のあり方を学びました。お客様にも教えて頂くことが多く、その時の経験がものすごく役立っています。

巨大な富津のリサイクルセンター


問 一番苦労したことはどんなことですか。
福田 リサイクルの仕組みをつくることが難しかったです。「卵が先か鶏が先か」ということで、どうしたらより良いシステムが作れるかで苦労しました。日本は再生資源輸出国なのですよ。
問  日本は資源不足の国とずっと思っていたのですが輸出国なのですか。
福田  銅やアルミスクラップなど金属再生資源を輸出しています。国内に製造工場が少なくなりましたので。今、ヨーロッパは再生資源が注目され、再生プラスチックでつくったバンパーを搭載したポルシェが話題となっています。

処理屋から製造企業に
問 今はSDGsが叫ばれ、循環型社会に関心が集まってきています。貴社のようなところが注目されているのではないですか。
福田 おかげさまで最近は大企業からもお声がかかるようになりました。廃プラで燃料をつくりたい。どういう品質のものができるのかなど内容はさまざまです。そこで我々も、ただの処理屋だけでなく、再生資源製造業として生まれ変わろうとしています。製造業となると品質管理が重要となりますが、そこをクリアしていこうと。
問 時代の変化とともに製造企業として生まれ変わるということですね。それはまさに今の時代の要請ですね。
福田 時代の要請とともに会社も生まれ変わります。

メルカリ方式の「ReSACO」をスタート

問 ITを駆使した新しい仕組みつくりに取り組まれているとか。そのきっかけは。

福田 2013年頃、第3次AIブームでディープラーニング等が盛んなときでした。AIのプログラミングの講習に参加したのがきっかけで、興味を持ちました。そのころメルカリが流行ってきた時で、メルカリの仕組みこそがリサイクル業界に役立つと強く思いました。そこで2018年メルカリ方式のBtoBプラットフォーム「ReSACO」をスタートさせました。
問  メルカリ方式とはおもしろいですね。BtoBとのことですがどんな会社がどんな物を出品しているのですか。
福田 今は特定の会社に活用して頂いています。商品としては太陽光パネルなどです。発電効率が低くなったものを売電用ではなく、自家用として使うなど、関心は高いです。今はテスト的に使ってもらっているという状況です。この「ReSACO」はトライシクルという会社で手掛けています。
問  今はテスト的ということですが、ネット上で企業の不用品を売買できるのは大変便利で、貴社の価値が高まりますね。
福田 最初は引っ越しで不要になったオフィス家具などを、メルカリ方式でやろうと思いましたが、企業からまとめて処理して欲しいとの要望があり、今は「まるっとお任せサービス」を展開しています。
問  企業にとっては、「まるっとお任せサービス」はありがたいですね。今後ものすごく需要がありそうです。福田社長がIT系の会社を経験しているのが役立っていますね。
福田 はい。入社前にIT系の企業もかじりました。リサイクル業界のDXについてはまだ始まったばかりです。ここを推し進めて、当社のミッションである「サーキュラーエコノミー」を実現していきたいと考えています。
問  サーキュラーエコノミーについてもう少しご説明下さい。
福田 循環型経済モデルを創っていこうということです。再生し続ける経済環境を実現することです。実は江戸時代は循環型社会だったのです。例えば水はコメを研ぎ、食器を洗い、最後は庭に打ち水にするなど、大切な資源を最大限に活用しようと、いろいろ工夫していたのです。

(図拡大)

福田代表が考えるサーキュラーエコノミー  
従来のリサイクル事業のみならず、リユース、リメイク、リビルド、リマニファクチャリングなどあらゆるループを推進する


リサイクル業は面白い 
問  サーキュラーエコノミーは、今どの程度まで達成できていると思いますか。
福田 まだ始まったばかりです。
問  理想とするサーキュラーエコノミーを目指す上で、一番のネックは何ですか。
福田 皆さんの意識ですね。クールビズのようなもので一度経験すると、大変簡単で便利なのですが。
問  今後の夢、抱負をお聞かせ下さい。
福田 リサイクル業は大変おもしろい事業だと思っています。環境問題のことばかり言うと道徳の教科書のようになってしまいがちですが、そうではなく、もっと面白くワクワク感のあるものだと思います。例えばリユースの店に行くと、いろんなものが並んでいて、これをどう使おうかと考え、思わぬ発想にワクワクします。リサイクルの面白さ、面白いリサイクルを研究していきたいですね。廃プラスチックもどう加工したら面白いものができるかなど、考えるとワクワクします。
問  今はまさに世界中が循環型社会に向けて走り出している時代ですから貴社のポテンシャルは高いですね。
福田 持続可能な社会を紡いでいくために、循環ビジネスをどう発展させていくのか。静脈企業として先端企業になれると考えています。それにはITや新技術など高度な技術をこなせる人財が必要です。
問  人財は重要ですね。座右の銘をお聞かせ下さい。
福田  「天は自ら助くる者を助く」です。
問  時代がまさに貴社の活躍を期待していると思います。本日はありがとうございました。


福田 隆氏 プロフィール
1974年生まれ、96年大学卒業後、ミネベア(現・ミネベアミツミ)に入社。2001年、外資系コンピュータ企業のEMCジャパンに入社。02年家業の東港金属に入社。半年後に父親である前社長の急逝に伴い、4代目社長に就任(現任)。18年トライシクルを設立、CEOに就任。19年BtoBプラットフォーム「ReSACO(リサコ)」をスタート。2020年サーキュラーエコノミーに対応するため大規模な「ReSACOリサイクルセンター」を完成。2020年9月東港金属グループから、ホールディング体制に移行、サイクラーズを設立。

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