会社名や組織名・役職・内容につきましては、取材当時のものです。
コロナ禍で長期間閉ざされたインバウンドが、今、2年半ぶりに再開。日本各地でその効果に期待が膨らむ。そんな中「日本人も知らない日本の魅力を世界に発信したい」と意気込む熱血漢がいる。Tokyo Creative代表の中川智博氏である。インバウンド向け情報発信のコンサルとして、日本各地の魅力を発掘。動画の企画・制作・発信に力を注ぐ。まだ目標の5%しか伝えきれていないと語る中川社長に本音を伺った。(聞き手 副編集長三浦千佳子)
問 日本の魅力を世界に発信するとのことですが、御社の事業内容についてお聞かせ下さい。
中川 自治体や企業の外国人へのアプローチを支援、インバウンド向けの動画の企画・制作・発信。どちらかというと情報発信に力を入れています。企画立案から実施、つまり川上から川下まですべてやります。
問 一言でいうとインバウンドのためのコンサル業ですね。創業は何時ですか。
中川 2013年ですが、本格稼働は5年前です。コロナ禍でも増収増益を維持しています。
問 インバウンドが無くなり一番影響があると思ったのですが、増収増益とは素晴らしい。どんなユーザーが多いのですか。
日本人と外国人の“両目線”が強み
中川 自治体や広告代理店、学校や旅行業などさまざまです。すでに100ユーザーを越えています。
問 なんとか自分たちの魅力を発信しようと苦労しているということですね。御社の強みはどこにありますか。
中川 一番は社員の半分以上が外国人なので、日本人と外国人の“両目線”で、情報を収集し発信できることです。オーストラリア人、マレーシア人、カナダ人などさまざまです。二つ目は欧米人を対象としていることです。中国人向けはたくさんありますが、欧米人向けは少ないです。
社員の半分以上が外国人であることが強み
問 外国人として自分たちが見たいこと、体験したいことを当事者意識で情報発信できるのは強いですね。やはり目線が異なるのですか。
中川 普通の観光コースにはない場所や体験が人気です。昭和にタイムスリップしたノスタルジックな場所や、山や樹木の緑色のグラデーションに興味を持つとか、アニメの聖地に行きたいとか、「どうしてそんなこと知っているの?」と思うほどニッチで、我々も毎日が発見です。「日本人も知らないような日本の魅力を世界に発信する」ことをモットーとしています。
問 インバウンド向けデジタルマーケティング支援とは、なかなか難しいですね。
中川 外国人に自分たちの町の魅力を発見、どうアピールするかなど、川上から川下までやっています。我々の仕事は医者に似ていると思います。ユーザーの話をよく聴くこと、問診から始まるということです。
問 クリエイティブディレクターの佐藤可士和さんが、「自分の仕事は医者に似ている」と言っていたのを思い出しました。お客の課題をしっかり聴き出し、課題解決の最も良い手段を見つけ、実行していくと。同じですね。
中川 私もかつて佐藤可士和さんに憧れていました。
問 一番人気のコンテンツはどんなものですか。
中川 三重県伊賀の忍者の故郷を紹介したコンテンツです。参加者はそこで忍者のトレーニングを受け、忍者対決を体験できるというものです。また杉並区高円寺の阿波踊りも人気です。35万回ぐらい再生されています。
三重県赤目四十八滝でのPR動画撮影風景
全国47都道府県の良さがある
問 中川社長から見て日本の良さはどこにありますか。
中川 ひとことで言うのは難しいですが、外国人にとってはミステリアスな国と思われています。サムライ、忍者、天ぷら、寿司が先行しますが、もっと掘り下げるとたくさんあります。切り口の出し方で変わります。我々が知らないだけで47都道府県の良さがあると思います。これをもっと伝えたいですね。
問 確かに我々が知らないだけでいろいろ発掘できそうですね。
中川 住んでいる人には普通のことでも、ニッチで面白いコンテンツがいくらでもあります。酒蔵ツァーとか、ニッチなラーメンの魅力とか。我々はまだ5%ぐらいしか伝えられていません。
問 たった5%ですか。まだこれからというところですね。インバウンドの方々に一番伝えたいことは。
中川 1回の来日で満足しないで、2回目、3回目と何度でも来日して頂きたいですね。そのためにも興味を持って頂けるコンテンツを発信したいです。
問 ようやくインバウンドが解禁になりましたし、円安も追い風になっていますね。
中川 これからがチャンスです。そこでしか体験できないこと、現地の人との触れ合いなど、インバウンドの方々に刺さるテーマを紹介していきたいです。旅が深化すればするほど強烈なリピーターが増え、日本の魅力が深まります。
デジタルマーケティング伴走支援
問 大都市だけでなく、地方でのインバウンド強化の課題は何ですか。
中川 やはり人材教育ですね。「インバウンドを地方に」といっても、何をどうして良いかわからない自治体や企業も多いです。そこで最近は社会人向け講座にも力を入れています。『リスキル』つまり学び直すということです。勿論、大学で観光学部の学生向けに講義もしています。
問 最近は自治体と連携しインバウンド向け人材育成に力を入れているとか。
中川 7月から自治体向け新サービス「デジタルマーケティング伴走支援」をスタートさせました。マーケティング担当者支援事業です。担当者の実務に即したプログラムで支援していきます。既に茨城県の国際観光課に導入して頂きました。
問 担当者に寄り添い課題解決をサポートするのはいいですね、人材育成に困っている自治体がたくさんあると思います。御社に依頼が殺到すると思いますよ。
皆が楽しんで輝ける、カッコいい会社を創りたい
問 今後の抱負、将来の夢をお聞かせ下さい。
中川 今クライアントが100社ですが、有難いことにリピート率が高い。「インバウンドのプロモーションならTokyo Creativeだね」と言ってもらえるように頑張りたい。そしてTokyo Creativeをカッコいい会社にしたいですね。楽しんで働き、カッコいい人間が増えることです。リクルート出身の人が外で活躍しているように、「あの会社出身の人は面白い人が多い」と言われるような会社にしたいです。