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【ベンチャーリポート】

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東京NBC事業承継フォーラムで髙田明氏が熱弁

東京ニュービジネス協議会が事業承継問題に取り組む。全国で4.000社の企業が集結、36年の歴史を誇るNBCは、日本の中小企業の最大の課題である事業承継問題の解決に向けて動きだした。1月31日には「未来に繋げるプラットフォーラム2023」を開催した。記念講演としてジャパネットたかた創業者の髙田明氏が熱弁をふるった。その後3つのセッションを実施、事業承継を経験した企業家やM&Aコンサルタントらによる活発な議論が交わされた。熱のこもったフォーラムの様子をリポートしたい。

(副編集長 三浦千佳子)

ジャパネットたかた創業者 髙田明氏

2023年1月31日、東京・京橋のイベント会場には、300人のビジネスパーソンが集まっていた。東京ニュービジネス協議会(以下NBC)主催で『集まれ!経営者!未来に繋げるプラットフォーラム2023』と題したフォーラムが始まるのだ。

このフォーラムではスタートアップから上場企業まで経営者が一堂に会し、会社の未来、日本の未来について考えようというものだ。第1回目となるこの日は「事業承継・M&A」をテーマに、様々な角度から議論を行った。

13時きっかりに会は始まった。

初めに主催の東京NBC会長の井川幸広氏が挨拶。「日本の中小企業の最大の課題は事業承継問題。この課題にNBCとしてしっかり取り組んでいきたい」と語った。続いて日本NBC会長の池田弘氏が挨拶。小池百合子東京都知事からはビデオメッセージが寄せられた。

挨拶する井川幸広会長

いまを一生懸命に生きる

記念講演は「夢を持ち続け日々精進」と題して、ジャパネットたかた創業者でA and Live代表の髙田明氏が熱弁をふるった。テレビショッピングでお馴染みの顔だけに、会場からは大きな拍手で迎えた。

髙田氏は慣れた手つきでマイクを握ると、静かに語り出した。

「今、世界中がコロナ感染で500年に1度の困難と闘っています。だからこそ夢が必要なのでは。我々はコロナ禍であることを受け入れることが必要です。いまを受け入れ、いまを懸命に生きることが大切です。これは中村天風さんのことばです。企業家は自分でどうにもならないことに悩み、負のスパイラルに囚われるのではなく、自分の会社でやるべきことに集中するべきです」

会場は静まりかえり、高田氏の話に聞き入る。

やったつもりになるな!

「不可能という言葉は、一生懸命やっている人には無いと思います。99%無理だと言われても、残り1%を100%にすることを考えれば、可能性が高まります。

私は長く通販の仕事をしてきましたが、商品の魅力を伝えるのは難しいことです。「伝えた」と「伝わった」は全く別物です。商品が売れて結果を出さなければ伝わったことにはなりません。やったつもりになるな! 成功に終わりはありません。いまを一生懸命生きることです。

人は人のために生きてこそ人。ミッションなくして企業の成長と継続はありません」。

熱く語る髙田明氏

「私は2013年、息子が38歳、自分が68歳の時に社長をバトンタッチしました。承継後は会長にならず、息子に任せました。いつでも相談にはのるよと言いましたが、この8年間、一度も相談は無かったですね。おかげさまで会社は順調に成長しているようです。

事業を成し遂げるにはミッション、パッション、アクションが大切です。私が尊敬する新将命さんは経営の教科書で「人間性ができた人、人間性ができる人」に承継しなさいと語っています。過信は慢心に繋がります。謙虚でなければなりません。

私は世阿弥が大好きです。600年前に「初心忘るべからず」と語っているのですから凄い方です。学ぶには常に謙虚であることが大切です。「我見と離見、離見の見」が大切です。私は夢を持ち続け、117歳まで生きようと思っています」。

髙田氏の説得力のある講演に、会場からは惜しみない拍手が沸き起こる。

ときに笑いを、ときに拍手を誘い、聴衆の心を鷲掴みにした60分であった。


事業承継について多角的に議論

記念講演の後は3つのセッションが用意された。

1つ目のテーマは『M&Aは難しくない!M&Aの頼れるパートナー達』

登壇者はファシリテーターを務めた桜川協和法律事務所パートナー和田正氏以下 野村證券㈱ プライベートバンキング部 部長の本田 佳則氏、きらぼしコンサルティング社長の強瀬 理一氏、マクサス・コーポレートアドバイザリー社長の森山 保氏の4名である。

2つ目は『実録!難しい中小企業の事業承継における資本と人財を対処法』と題して議論が交わされた。

登壇者はダイアナ社長兼会長の徳田充孝をファシリテーターに、ヘリテージパートナーズ代表の浜田康成氏、マラトンキャピタルパートナーズ代表小野俊法氏、青山財産ネットワークス社長蓮見正純氏ら4名である。

浜田氏からは熊本の老舗醤油醸造企業が香港資本と提携、事業を続けている実態が語られ、会場の関心を惹いた。

左から徳田氏、浜田氏、小野氏、蓮見氏

3つ目のパネルディスカッションでは「そもそも事業承継する価値を創り出せるか」をテーマに熱心な議論が交わされた。

一橋大学名誉教授の米倉 誠一郎氏がファシリテーターを務め、内閣府大臣政務官の鈴木英敬氏、ドムドムフードサービスの藤崎 忍社長、ボードウォーク・キャピタルの那珂通雅社長らが熱く語った。

藤崎社長からは主婦から居酒屋を経て、50歳でドムドムの社長を承継した経緯など実体験が熱く語られた。那珂社長は、日本は後継者不在で、年間45000社が廃業に追い込まれており、これを解決したいと井川会長から指示されたことを明かした。

米倉氏は「日本の中小企業は外資から見ると宝の山、これまでのM&Aのイメージを払拭し、ビジネスチャンスに繋げることが急務と」とまとめた。

熱く語った4人、左から那珂氏、米倉先生、藤崎社長、鈴木氏

13時から17時30分まで、4時間30分のプログラムはあっという間に終了した。力強い記念講演と3つの熱いセッション。濃密な時間を共有した参加者たちには一体感が漂い、惜しみない感謝の拍手が贈られた。

最後にこの企画のリーダーでNBCの副会長・政策提言 委員会委員長を務める高橋ゆき氏が挨拶した。

これだけの企画を構想、実現するのにどれだけの時間と体力を費やしたことか。主催者側の熱意がひしと伝わってくるフォーラムであった。

18時からは名刺交換会が開催された。参加者は興奮冷めやらぬ表情で、会話の輪が広がった。

この企画のリーダー高橋ゆき副会長

このフォーラムに尽力した方々

事業承継の糸口に

このフォーラムは、99.7%を占める日本の中小企業の課題である事業承継問題を解決しようとNBCが立ち上がったものだ。自ら承継を経験した経営者やサポートするコンサルタントらが一堂に会し、共に考える素晴らしい場となった。

東京NBCは今会員450人、全国では4000社に上る。日本でも最大級の経営者のネットワークだ。今回のフォーラムが、後継者不在に悩む経営者にとって大きな力になったことは間違いない。今回は第一回目として事業承継をテーマとしたが、未来に繋げるプラットフォーラムとして今後どのように進展し、日本経済に貢献していくか、期待される。

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