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ファーストリテイリング 柳井正 会長兼社長

会社名や組織名・役職・内容につきましては、取材当時のものです。

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ベトナム人高校生向け奨学金事業をスタート

ベトナム人高校生向け奨学金事業をスタート

ファーストリテイリング柳井正会長兼社長

柳井正会長兼社長が創設したファーストリテイリング財団(以下、FR財団)は、ベトナム人高校生向け奨学金事業をスタート、2023年7月、ハノイのベトナム日本国大使館で、第一期生の壮行会を開催した。
式典には、在ベトナム日本国大使館の渡邊滋次席公使、ベトナム国教育訓練省国際協力局国際教育部フン・ティ・ホン・ヴァン次長、ファーストリテイリング財団の小山紀昭統括事務局長が、第一期生6名と共に列席した。
FR財団としては、東南アジア諸国の人々との交流強化が今後の日本社会の発展に重要と考え、奨学事業を検討。ベトナムからスタートした。日本の大学に進学するベトナム人高校生に対する奨学金給付事業となる。
さらに2023年は日本とベトナムの外交関係樹立50周年ということもあり、「50周年認定事業」の一つとして、両国の友好・協力関係の促進を目指すという。

前列左よりフン・ティ・ホン・ヴァン次長、渡邊滋次席公使、小山紀昭統括事務局長
後列は今回の奨学生6名


同式典において、渡邊氏は「ファーストリテイリング財団の厳しい選考をくぐり抜けた奨学生6名が、将来、両国の更なる発展を牽引する、頼もしい存在になってくれることを期待している」と述べた。また、FR財団の小山氏は「選ばれた6名は、大変優秀で、今後の両国の発展に大きく貢献してくれるよう、財団としてが継続的にサポート、ベトナムでの人材育成に協力したい」と語った。

■「ベトナム人学士留学生奨学金事業」について

この奨学金事業は、日本への留学を希望するベトナム人の高校生が、日本の大学でさまざまな知見を身に着けるとともに日本の文化を理解し、お互いが知的につながり高めあうことを目的としている。そして将来この奨学生が、ベトナムや日本および世界の発展に寄与するとともに、FR財団と共により良い社会を実現し、次世代へ継承していくことを期待するとしている。
奨学金は1名あたり年間最大400万円を上限に支給、返済不要という。但し東京大学、京都大学、早稲田大学、慶應大学など、対象となる12の大学で、英語で行われるプログラムが受講可能の能力を持っていることという。この条件をクリアするだけでどれだけ優秀な学生であるかが理解できる。
ベトナムの幅広い地域から応募あり、その中から最終6名が合格、本年秋から各大学で法律、化学、教育、宇宙工学などの分野で学ぶという。FR財団は、2023年以降も年間最大10名のベトナム人高校生にこの奨学金事業を継続するとしている。
合格者からは、「家庭の事情で、日本へ留学など遠い夢でしたが、その夢が現実となり、新しい未来を切り拓く機会になりました」、「この奨学金により、経済的に困難な状況でも日本の教育環境で成長する機会を得られることが嬉しい」と喜びの感想が語られた。 

■なぜベトナム?

ところで数ある国の中でなぜベトナム?と思うが、FRグループとベトナムの関係は深い。ベトナムにはユニクロが提携している縫製工場があるし、2019年11月にはホーチミンのドンコイにユニクロ1号店をオープン。その後ハノイなど各地区にオープン。現在はベトナムに17店舗を展開している。

ユニクロドンコイ1号店外観

整然と商品が並ぶドンコイ店店内


■勤勉でハングリー精神に富むベトナム人に期待

柳井会長はベトナムの人々について「ハングリー精神があり、勤勉で粘り強い国民性で優秀な方が多い」と、関心を寄せているという。
今回の奨学金事業についても、最終選考会には柳井理事長自らが出席したという。柳井理事長の評価ポイントは、学力や英語力が優秀なだけでなく、なぜ日本に留学したいのか、彼らが日本での学びをどう社会に還元したいと思っているか、またやり遂げてくれる人物かどうかを重視したという。柳井理事長がいかに彼らに期待しているかがうかがい知れる。この奨学金事業で学んだ彼らが、本当の意味で、両国の架け橋となってくれることを期待しているのであろう。
FR財団は、難民子女のための学習支援やダイバーシティ・リーダー育成のための奨学金事業などさまざまな活動を実施している。柳井会長が創設、理事長を務めるのだから、全ての活動は柳井会長の肝いりだ。その一つが今回の奨学金事業である。

■トップとしての生き方

アフターコロナで人々の購買意欲が高まったとはいえ、今、FRグループは過去最高の業績を更新、その強さには驚くばかりだ。7月13日に発表された2023年8月期連結売上収益は2兆7,300億円で、前期比18.6%増、営業利益は3,700億円で、同24.4%増と、過去最高を見込んでいる。
こうした業績を実現できるのは、世界のFRグループの社員一人ひとりのたゆまぬ努力の賜物といえる。
 ユニクロは今や国内よりも海外の方が店舗数も収益も多い、まさに世界に認められたグローバル企業といえる。
「服を変え、常識を変え、世界を変えていく」
というミッションの元、
「社会をより良く変えていくことが、企業の使命」
というFRグループ、こうした高い志を全社員が共有し実行。真のグローバル企業を目指すという。
これを実現する原動力は、トップとしての柳井会長の考え方、生き方そのものといえよう。
 今回の奨学金事業のことを知人に話すと「ユニクロの社長は本当にりっぱな人ね」と感心していた。 
成功した企業家がどう生きるのか、どう社会に還元するのか。柳井会長が尊敬される企業家として先頭を走っていることは、多くが認めるところだ。若手企業家もぜひ柳井会長に続いて欲しいものだ。
(レポート 副編集長 三浦千佳子)

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