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【レポート】 

会社名や組織名・役職・内容につきましては、取材当時のものです。

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ファストリ柳井社長兼会長ハワイで被災者支援

米ハワイ州マウイ島で大規模火災が発生、島が炎に包まれるという大災害に見舞われたのは2023年8月だった。1年も経つと人々の記憶が薄くなるが、コツコツと支援に取り組んでいるスゴイ企業家がいる。ファーストリテイリング (以下ファストリ)の柳井正会長兼社長である。2024年8月、大和ハウスと共に建設中だった仮設住宅50戸が竣工した。ここには山火事で被災した住民が入居することになる。

柳井社長と大和ハウスの関係は深い。ユニクロの全国展開に於いては、ロードサイドの店舗建設や、ファストリ専用の物流倉庫を建設するなど協業を重ねてきた。

ファストリの柳井正会長兼社長(左から2人目)と大和ハウスの芳井敬一社長(同3人目)

今回の仮設住宅建設を推進したのは柳井社長の資産管理会社でハワイ州に本社を置くTYマネジメントコーポレーションである。マウイ島の被災を支援しようと早くから仮設住宅を整備するプロジェクトを立ち上げ、大和ハウスの子会社がユニットを提供、米国の建設会社が施工した。
大和ハウスグループとしては、これまでも阪神大震災や東日本大震災、そして能登半島地震など、災害時に約2万8000戸の仮設住宅を建設してきた実績がある。そこで今回の仮設住宅構想を引き受けたという。

無類のゴルフ好き 
 なぜ柳井社長がマウイ島を支援?と思われる方もいるだろう。ゴルフ好きなことで知られる柳井社長はマウイ島にある世界屈指のゴルフ場を所有。年に何度か訪れるマウイ島でのゴルフは、多忙を極める柳井社長にとって最高の命の洗濯であろう。
柳井社長の盟友で、ファストリの人材育成に貢献している一橋大学やハーバード大学ビジネススクールで活躍する竹内弘高氏。かつて柳井社長とのゴルフ談を次のように語っていた。
公私共に盟友の2人。特にゴルフでは互いに競い合う仲という。極めて多忙な2人だが、年に何回か家族連れでハワイの休日を楽しむ。
「柳井さんにとって私は宿敵なんです」と竹内氏。「ゴルフ場での柳井さんは快活で茶目っ気たっぷり。冗談を言い合う仲です。しかし勝負は真剣そのもの。2人とも決して手は抜かない。最終ホールに強いという竹内氏は最後の土壇場で力を発揮する。すると柳井さんは「大学の先生にしておくのはもったいないと。私に対する最大の賛辞なんです」と竹内氏。「柳井さんは裏表がない。常にストレート、そこが魅力です。しかし実は2人とも妻には弱い、ここが共通点」と、語った竹内氏の笑顔が蘇ってきた。
そんな柳井社長にとって、昨年のマウイ島の火災被害はさぞかし胸を痛めたことだろう。火災で家を失った従業員になんとか住める場所を提供したいという真心が、今回のプロジェクトを実現させた。

竣工式での柳井社長、左はグリーン州知事

どう生きたお金を使うか
 今年ユニクロ創業40周年を迎える柳井社長。日本屈指のグローバル企業の経営者として、資産家としても知られる。その貴重な資産をどう使うのか。過去には柳井社長個人として、ノーベル賞受賞者の本庶佑特別教授と山中伸弥教授の活動に50億円ずつ、合計100億円を寄付し、世間を驚かせた。今回のマウイ島の被災者支援はもとより、さまざまな場面で支援を続けている。その数は計り知れない。
 成功した企業家がその資産をどう使うかはその人の生き方、人間性そのものだ。そういう意味では柳井社長の生き方はまさにお手本といえる。金額の大きさではない。どう生きたお金を使うかだ。ぜひ柳井社長に続いて欲しいものだ。  (レポート三浦千佳子)

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