会社名や組織名・役職・内容につきましては、取材当時のものです。
先般、獺祭でお馴染みの旭酒造(株)の桜井博志会長が理事長を務める日本センチュリー交響楽団の音楽監督に、日本を代表する作曲家で指揮者の久石譲が就任すると発表があった。
日本センチュリー交響楽団は大阪府豊中市に本拠地を置く音楽団体。桜井博志会長は2021年より理事長に就任している。久石氏は同楽団との縁も深く、現在首席客演指揮者を務めているが、2025年4月から音楽監督に就任するというもの。
固い握手を交わす、左より桜井博志氏と久石譲氏
■獺祭とのコラボを発表
今回の音楽監督就任に際し、久石氏は「一生に一度は、自分の考えていることを実現できる音楽監督という立場をやってみたいという想いがありました。小編成の日本センチュリー交響楽団は素晴らしいアンサンブルを持っている。 スポーツカーのようなスピード感や切れ味という持ち味をさらに磨いた先に、いつか世界でもやっていけるかもしれないという可能性を感じられる」と抱負を語った。
桜井理事長は「“世界のセンチュリー”にするために力を貸していただきたい」と期待を寄せた。
そして久石氏の音楽監督就任を記念し、スペシャルスポンサーである旭酒㈱より、漫画『島耕作』シリーズなどで名高い漫画家の弘兼憲史が手がける久石譲氏のイラストをラベルにした「獺祭」と、アメリカの酒蔵でつくる「獺祭Blue」をつくることを発表した。 この特別の“獺祭久石譲”は、今後、主催演奏会や豊中近辺などで販売予定という。
左「獺祭Blue久石譲」と右「獺祭久石譲」
今後定期演奏会は全8回すべての回で、ベートーヴェンと久石自身の作品を含む1950年代以降の現代曲が組み合わされる。 「クラシックを再構築し、魅力を伝え、1人でも多くのお客さまを掴みたい」と語った。
右 抱負を語る久石氏
久石氏は第290回(2025年6/13)、第292回(同9/26)、第295回(2026年1/17)の3回の定期演奏会に登場予定。就任記念演奏会ともいえる第290回では、ベートーヴェンの「田園」と自身作曲の交響曲第2番で音楽監督としての幕開けを飾るという。
ジブリ音楽など、世界で高い評価を受ける久石譲氏が、日本センチュリー交響楽団とともに目指す“世界”への挑戦に多くの期待が寄せられている。
■獺祭と日本センチュリー交響楽団との熱い関係
大阪府のオーケストラとして 1989 年に発足し、1990年日本センチュリー交響楽団としてデビュー。ミュージックアドバイザーに秋山和慶を迎え、佐渡裕氏ら著名指揮者が関わってきた。2020年以降はコロナ禍で経営に行き詰ったが、楽団存続をかけたクラウドファンディングを実施するなど、斬新な取り組みで頑張ってきた。2021年2月には桜井会長の企画で、お酒に聴かせるための新曲委嘱「交響曲 獺祭~磨migaki~五感で味わうコンサート」を、豊中市(世界初演)と獺祭の故郷・山口県で開催し、大きな話題となった。
こうした縁もあり、2021年7月、桜井博志会長が理事長に就任。特別スポンサーとして支援を続けてきた。楽団存続のために、クラウドファンディング第2弾に挑戦、12月には日本センチュリー交響楽団 特別番組『磨き、希望は生まれる。音楽とともに。』を放送するなど、コロナ禍においても力強く前に進む楽団の取り組みに注目が集まった。そして2022年8月には「獺祭Presents 岩国特別演奏会」を開催するなど、獺祭との熱いコラボが続いていた。
桜井博志会長
ところで桜井会長がなぜ日本センチュリー交響楽団の理事長を引き受けたのか、獺祭を通じ、日本の食文化の世界発信など、さまざまな分野で活躍する桜井会長だが、その経緯を次のように語った。
「コロナ禍真っ最中の2021年に当時センチュリーの主席指揮者だった飯森さんに頼まれて理事長に就任しました。コロナの影響で非常に厳しい楽団運営である事は理解していました。楽団運営の全貌が現れるにつき、更に厳しい状況である事がはっきりしました。演奏力には定評があり、ここまで続いた楽団を消滅させるのはもったいない。こうした状況を知りながら音楽監督を引き受けてくれた久石譲さんとともに、日本センチュリー交響楽団が社会に貢献できる楽団に生まれ変われることを目指して努力していきます」
それにしても桜井会長の英断、生き方には頭が下がる。超多忙にも関わらず、敢えて渦中の栗を拾った桜井会長。逆境にめげることなく果敢にチャレンジしていく、根っからのチャレンジャーだ。桜井会長と久石譲氏のタッグで、同楽団の新たな世界が拓かれることを期待したい。 (三浦千佳子)