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【ビジネスレポート】株式会社獺祭 桜井博志会長

会社名や組織名・役職・内容につきましては、取材当時のものです。

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『獺祭 経営は八転び八起き』を出版。桜井博志会長熱く語る

「獺祭」といえば、日本発の世界的に名高い日本酒だ。山口県岩国市の小さな酒蔵から世界へとチャレンジ、今や「獺祭」を知らぬ人はいない。しかしここまで来るには厳しい道のりだった。どれほどの挫折を味わい、這い上がってきたことか。その挑戦の歴史を桜井博志会長が、著書にまとめ『獺祭 経営は八転び八起き』を出版。先般、記者会見が行われた。その模様をレポートしよう。  (三浦千佳子)

11月某日昼、東京・港区六本木のレストランには多くのメディア関係者が詰めかけていた。夜には賑やかなこの街も、昼は静かだ。会場で皆の注目を集めていたのは、株式会社獺祭の桜井博志会長だ。この日も紺のダブルのスーツで決め、ダンディだ。
まもなく桜井会長の著書、『獺祭 経営は八転び八起き』の出版記念記者会見が始まるのだ。今回も司会を務めたのは、桜井ファンと語る元テレビ朝日アナウンサーの松井康真氏だ。

『獺祭 経営は八転び八起き』を手に微笑む桜井博志会長

初の著書から10年を経て
まずは出版元の西日本出版社の内山正之社長のメッセージから始まった。今回の新刊『獺祭 経営は八転び八起き~美味しい酒を造りたい、ただそれだけを追いかけてきた』は、桜井会長が初の著書から10年の歩みを綴ったもの。前著は辛口エッセイストで名高い故勝谷誠彦氏が『獺祭 天翔ける日の本の酒』を執筆。勝谷さんが好きだったと語る桜井会長が10年経て、勝谷さんに報いるためにも、続きを記録することが必要と考え、今回の出版につながったのだと。

左が今回の『経営は八転び八起き』右が前著『獺祭 天翔ける日の本の酒』


桜井会長の“八転び八起き”の人生
続いて桜井会長が登壇、今回の新刊を出版するに至った経緯を静かに語りだした。
これは私が不定期で書いている「蔵元日記」をまとめ、編集したものです。山口県の山奥の潰れそうな酒蔵を継いで40年、山谷越えてここまできました。今や売り上げ214億円になるまでに成長。「とにかく美味しい酒を造ろう」その想いだけでやってきました。いろいろありましたが、蔵元日記は、その時その時の本音を綴ったものです。

新刊発刊の経緯を語る桜井会長

笑顔で時に熱く、時に淡々と語る桜井会長のことばに、会場は一体となり、応援団のような空気に包まれる。そこには桜井会長の凄さに驚くと共に「獺祭」を世に送り出し、ここまで成長させたその手腕とチャレンジ精神に脱帽。そんな感動と敬愛の眼差しが注がれる。
 次にモスフードサービスの前会長、櫻田厚氏が登壇。「弘兼先生の紹介で桜井会長と御縁を頂きました。獺祭は日本の誇り。メイド イン ジャパンを発信する企業として、1000億円企業となることを期待しています」とエールを送った。

モスフードサービス櫻田厚前会長


続いて漫画家の弘兼憲史氏がビデオで登場した。弘兼氏と桜井会長は同郷で同世代。互いに熱い友情で結ばれ、桜井会長のイベントには欠かさず出席、エールを送る仲だ。獺祭の漫画も多数執筆している。この日はやむをえない事情だったのだろう、それでも動画で登場するからすごい。

ビデオで登場した弘兼憲史氏


「この本は桜井さんの人生そのものだと思います。八転び八起きということは8回転んで8回起き上がったということ。かなり不屈の精神です。特に転び方が一番大きかったのはニューヨークの酒蔵建設。当初30億円の予算が95億円に膨れ上がった。それでも諦めずにやり遂げたというのは本当にすばらしい。酒造業界は斜陽産業と言われるが、斜陽だからこそのチャンスがたくさんある。
そして弘兼氏が桜井会長をイメージして書いたというイラストが贈られた。そのカラスのイラストに会場からは「なるほどその通り!」とため息が漏れた。

弘兼氏から届けられたイラスト

このメッセージを受けて桜井会長がマイクを手にした。
「普通は“七転び八起き”ですが、私は八回も転んでいます。九回目に起きなきゃいけないんですが、まだ起きてない。これから起きるべく頑張ります」と笑顔で語った。ここには「美味しい酒を造りたい」という想いだけでチャレンジし続けてきた挑戦の軌跡が綴られています。「これは私の失敗談。皆さんに気楽に読んでもらえたら、それが一番うれしい」と語った。



「獺祭 BLUE」で乾杯
続いてパーティを始めるにあたり、西日本出版社の内山社長が挨拶した。我々は感動したものを本にしている。桜井会長が、杜氏がいなくても自分たちでやれると、大吟醸づくりに挑んだという話を伺い、僕らと同じと思った。10年前勝谷さんに書いてもらったが、この10年で獺祭はどんどん前に行っている。出版社はいろいろあれど、よその版元と違って厚みが違う」とその心意気を語った。

西日本出版社内山正之社長


この日はレストラン六花自慢の料理とニューヨーク酒蔵の「獺祭 BLUE」、獺祭純米大吟醸 磨き二割三分がふるまわれた。

獺祭BLUE 50 (左)と、獺祭純米大吟醸磨き二割三分(右)


桜井会長の人生が詰まった渾身の一冊
 今回発刊した『獺祭 経営は八転び八起き』を見てみよう。まず手に取った人は必ず驚くのが272ページの本には小さな文字がびっしり並んでいることだ。目次のページには、いまどきこんな小さな文字で書かれた単行本は見たことない、というぐらい小さなフォントだ。第一章~第八章までびっしり書かれている。どの項目も抜けない、カットできない。従ってやむを得ずこうなったというのが事実であろう。出版元の気合が感じられる渾身の一冊といえる。

『獺祭 経営は八転び八起き』


ここに記されているのはまさに桜井会長の人生そのものだ。よくぞこんなにと思うほど、数々の試練が立ちはだかっている。しかし「ここで諦めたらお終わり」と、歯を食いしばって乗り越えてきた失敗と挑戦の歴史なのだ。


売上1.000億円は海外チャレンジのスタートライン
桜井会長にさらにお話を伺うことができた。
「今まで数知れないほどの失敗を重ねてきた。しかしその失敗を経験していなければ今の獺祭はないのです」と桜井会長。まさに八転び八起なのである。もともとチャレンジが好きな性格ですかとの問いには「僕は子供の頃は気が小さくて・・・」と意外な答えが返ってきた。
獺祭は2025年6月、株式会社旭酒造から株式会社獺祭と社名を変更、売り上げ1.000億円企業になると宣言。桜井会長、桜井一宏社長共々東奔西走の日々を送っている。
潰れそうな酒蔵を引き継ぎ約40年、2025年度は214億円を達成するに至っている。しかし桜井会長はそこで満足してはいない。「売り上げ1.000億円企業になれば世界へのスタートラインに立てる」と更なるチャレンジに力を込める。そうなればシャンパンなどと勝負できると。

更なる夢を語る桜井会長


獺祭は日本文化そのもの

獺祭は食事の前半で楽しんでいただきたい。獺祭のライバルはシャンパンと語っていた桜井会長。獺祭は他の日本酒とは一線を隔す。酔うための酒ではない。獺祭は獺祭なのだ。だから獺祭にはワイングラスが良く似合う。この日も勿論、ワイングラスで提供された。

獺祭はワイングラスがよく似合う


「獺祭は杜氏を介さないで造っているから、ものすごくデジタルでできていると思っている人が多いが、実はそうではない」と桜井会長。温度管理。発酵の時間など、すべてデジタルではない。日本人の細やかな発想、細やかな技法、細やかな努力で造られている。「獺祭はものすごく日本的なんです。日本人は皆で努力する。そういう日本の文化から生まれる。獺祭は日本人だからできるんです」と強調した。獺祭は日本文化そのものなのだと。
 今回の「『獺祭 経営は八転び八起き』の出版をテコに、さらなる上へとステージを登っていくのであろう。ニューヨーク酒蔵を造り、社名を変更。宇宙での酒造りなど、さらなる高みを目指す桜井会長。今、目標の何合目か?との問いに「まだ3合目か4合目」とキッパリ。まだまだ夢は広がる。さてこの先獺祭はどこまでいくのか!考えただけでワクワクする。この日集まった人々は皆、同じ想いだったろう。獺祭の未来に乾杯したい!

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