会社名や組織名・役職・内容につきましては、取材当時のものです。
株式会社獺祭(山口県岩国市)は、5月13日から2週間、日本を代表するアーティストらとコラボし、日本橋三越本店(東京都中央区)でPOPUPを開催した。テーマは「アートと獺祭、獺祭とアート」。 三越本店で開催された記者発表会には、桜井博志会長と一宏社長、漫画家弘兼憲史氏、山田錦農家の北嶋将治氏ら4人の役者が勢揃い、トークイベントに臨んだ。 (レポート三浦千佳子)

【左から桜井博志会長と一宏社長、山田錦の北嶋将治氏氏、弘兼憲史氏】
■天女像広場で獺祭が羽ばたく
2026年5月13日(水)午前9時、東京中央区日本橋の三越本店の1階には多くの記者たちが集まっていた。㈱獺祭のアートイベントの記者発表会が始まるのだ。会場は日本橋三越の象徴でもある巨大な天女像前広場。特別の獺祭と現代アートが展示され、いつもと違い異彩を放つ。50人ほどの記者とテレビ局のカメラも詰めている。獺祭が今度は何を発表するのか?記者たちの期待が広がる。

【巨大な天女像広場で開催】
9時きっかりに会見が始まった。まずは社長の桜井一宏氏が挨拶。「今回は三越さんのお声がけで獺祭の酒造りをアートと空間で体験するPOP UPを開催します。アーティストの皆さんに山口の酒蔵で酒造りの現場を体験いただき、そこから感じるインスピレーションを自由に表現していただきました。今回は10人のアーティストやクリエイターの方々にご参加いただいたが、日本のモノづくりやブランドを世界に発信していきたい。そして三越のこの特別の場で、特別の獺祭とアートを体験する空間を味わっていただきたい」と語った。

【挨拶する桜井一宏社長】
■アーティスト・クリエイターの応援の場に
続いて桜井会長、弘兼憲史氏、山田錦農家の北嶋将治氏の3人が登壇、トークセッションが始まった。ファシリテーターは今回も弘兼氏だ。
まずは今回のイベントについて桜井会長が語った。「昨年の夏ごろに三越さんから話をいただいた。アートはあまり詳しくないが大変光栄で、場所が三越本店の天女像の前というのでお受けした。アーティストやクリエイターの方々は酒蔵だけでなく田んぼまで見ていただいた。獺祭のいいところも悪い所も全て作品にえぐりだして欲しいと依頼。今回の試みが日本のアーティストの方々の応援の場、日本文化の応援の場になれたらと思います。

【左熱く語る桜井会長、弘兼氏、北嶋氏】
美味しい獺祭をつくるには良い酒米が必須だ。獺祭では生産者のモチベーションアップのために7年前から「最高を超える山田錦プロジェクト」を実施してきた。中でも福岡の北嶋氏は2度グランプリに輝いた強者だ。
北嶋氏曰く、お米の苗をいじめてポテンシャルを引き出すという。梅干しを入れたり、海水を入れたりとチャレンジャーだ。良い山田錦はつくり手で決まると断言する北嶋氏。そのチャレンジ精神は留まることがない。まさにクリエイターなのだ。今回は北嶋氏の山田錦で仕込んだ特別の獺祭「北嶋米使用 獺祭 磨きその先へ」(720ml=5万5千円・税込)を揃えている。
桜井会長は語る。獺祭は屋台で飲むのではなくワイングラスで味わって欲しい。データを駆使し四季醸造なので獺祭を工業製品のように思っている方が多いが、実際は違う。米を磨き、手間をかけ、データを使い、人の手の感覚と最新の技術を積み重ねて創り出している。より良い一杯のために常識を疑い続ける。それが獺祭の酒造りです。そこのところを知って欲しいというのも今回のイベントを受諾した狙いと語った。
■獺祭+現代アートが勢揃い
ではどんなアートが揃ったのかその一部をご紹介しよう。参加者は浅野 友理子氏、大小島 真木氏、米澤 柊氏、チタン製オリジナルデザインボトルを創った真田将太朗氏。獺(カワウソ)のぬいぐるみを制作した尾崎歩美氏。アーティストで陶芸家の秋山具義氏。東京銀器の上川宗光氏、そしてオリジナルハンカチを制作した近沢レース店など、多くのアーティスト・クリエイターが集結した。どれもがオリジナリティに溢れ、獺祭の酒づくりからどうしてこのような発想が広がるのかと圧倒される。獺祭を味わいながらその驚きにひたるのも楽しい。

【浅野 友理子氏の作品】

【真田将太朗氏のチタン製オリジナルデザインボトル】

【獺祭×アートの会場】
会場には獺祭のイベントには必ず登場する漫画家弘兼憲史氏が書き下ろした新作『懲りない親父、世界へ挑む』が並んでいた。弘兼氏は桜井親子とは同郷の山口県の出身だ。獺祭については何冊も執筆しているが、これが最新刊だ。獺祭が苦難を乗り越えどうやってここまで成長できたのか。少し読み進んだだけで、弘兼氏の獺祭愛、桜井親子愛が伝わってくる。期間中には弘兼氏と桜井会長のトークイベントも開催された。

【弘兼憲史著「「懲りない親父、世界へ挑む」】
中央のカウンターでは、「北嶋米使用 獺祭 磨きその先へ」を一杯(30ml=2千円)で提供。また「獺祭 純米大吟醸 磨き二割三分」は(60ml=1千円)などを提供していた。「獺祭」を味わいながらアートを楽しめるとは獺祭ファンにはたまらない。会場にはさまざまなジャンルのアートが展示され、それぞれの感性で獺祭の酒造りを表現していた。 これらを見ただけで獺祭の新たなステージが見えてくる。
桜井会長は「アーティストの皆さんの作品を見て、こんなにも発想が広がるんだと驚かされた。アートも獺祭も人が生きていくために必須な存在ではないかもしれない。しかし人生には心を揺さぶられるようなものがあって初めて生きていける」と語った。

【発想力の広がりに感動したと語る桜井会長】
■獺祭のチャレンジは続く
獺祭アート展はたった2週間と短かったが新たな可能性が広がった。そして、大きな発信力となったことは間違いない。次は何かとの問いに「世界に獺祭の存在感を示せるものならやりたい。『美食とのコラボかな』」と桜井社長。何やら次は海外でのイベントも想定される。

【左熱く語る一宏社長と桜井会長】
昨年、社名を獺祭に変更、世界のDASSAIを目指しチャレンジ。売上高1000億円を掲げ走り続けてきた。NYの酒蔵も順調、昨年の関西万博では、オーストリア館で、ウィーン・フィルハーモニック・テイストの音楽を聴かせて発酵させた獺祭を販売し話題となった。
宇宙での酒づくりも始動。宇宙で発酵させた醪(もろみ)を地球に持ち帰り、搾って清酒に仕上げる。実験用に必要な量を除き、100ミリリットル分を瓶詰めし「獺祭MOON―宇宙醸造」として1億1000万円で販売、宇宙事業に寄付する。
宇宙での酒造りとは壮大な計画だが、夢が広がる。こうしたチャレンジ精神があるからこそさまざまなところからお声がけがあるのだろう。
世界の獺祭へとさらなる飛躍を目指す桜井会長と社長。そのチャレンジ精神と人間力が獺祭の味わいを創っているのだろう。今回は獺祭×アートだったが次は何がくるのか。その可能性は果てしない。それを楽しんでチャレンジするのが桜井親子だ。獺祭の未来に期待したい。