会社名や組織名・役職・内容につきましては、取材当時のものです。
スタートアップが自社の事業や有望性などをプレゼンして競うピッチ大会、「スタートアップワールドカップ2026」東京大会が7月17日、東京・六本木で開催された。今年は10社がエントリー、最優秀賞には㈱カウシェが獲得した。会場には約1200人が詰めかけ、熱気に包まれた。この日はピッチ大会だけでなく、パネルディスカッション、ユースピッチコンテスト、パフォーマンスなど、盛りだくさんのプログラムで会場を盛り上げた。その模様をレポートしよう。 (三浦千佳子)

2026スタートアップワールドカップ東京大会に参加の面々
2026年7月17日、東京・六本木のホテルには午前中から多くの人が詰めかけていた。アメリカ・カリフォルニアに本社があるベンチャーキャピタル「ペガサス・テック・ベンチャーズ」(以下ペガサス)主催の「スタートアップワールドカップ2026」が始まるのだ。広い会場は多くの人で埋め尽くされた。その数約1200名。どの顔も輝いていた。
今年で8回目となるこのピッチ大会、東京大会には250社の応募があったという。 その中から書類選考で選出された10社がこの日ピッチ大会に臨んだ。
■蒼々たる顔ぶれのパネルディスカッション
まず壇上を賑わせたのは、蒼々たるメンバーによるパネルディスカッションだ。パネラーは、オリックスシニア・チェアマン宮内義彦氏、KDDI会長髙橋誠氏、初代デジタル大臣で衆議院議員の平井卓也氏という経済界の重鎮たちだ。ファシリテーターは今年も一橋大学名誉教授の米倉誠一郎氏が務めた。

パネルディスカッションの蒼々たる顔ぶれ
テーマは「日本企業復活のカギ~大企業×スタートアップの協業をどう成功させるか」だ。
平井氏は「未来を創れるのはスタートアップしかいない」と熱く語った。KDDIの高橋氏は「KDDIこそが40年前にスタートアップが集まって創った企業、大企業も大きいだけでなくスタートアップを支援することが大切」と語った。オリックスの宮内氏は日本のベンチャーキャピタルの資金があまりにも小さい、ベンチャーのいいものを受け入れる組織になっていない」と問題点を指摘、大企業が一番変わらないとダメと激を飛ばした。
米倉氏は「これからはAIが大きなカギになるが、日本のAIは20周遅れ、スピード感が大切」」と語った。各人が自論を発言、熱い論議が交わされた。政財界の重鎮の生の声に冒頭から会場は盛り上がった。
■高校生以下の「ユースピッチコンテスト」
続いて今年は小・中・高校生・高専生による「ユースピッチコンテスト」が開催された。4組の若き挑戦者たちが緊張しながらも堂々たるピッチを行い、会場からは温かい拍手が送られた。見事優勝したのは、地方移住のミスマッチ解消する移住支援プラットフォームを提供する「m.k.」(市川学園 市川高等学校).だ。m.k.は東京予選代表として、11月にサンフランシスコで開催される世界大会に出場する。

中央がユースピッチ優勝「m.k.」(市川学園 市川高等学校)
■白熱のピッチ大会
17時からいよいよ2026年度のピッチ大会が始まった。まずはこの日の審査委員が紹介された。今回もアステリア代表の平野洋一郎氏ら、企業経営者、ベンチャーキャピタリストら多様な8名が登壇、審査を務めた
この日250社以上の応募の中から審査を勝ち抜いたファイナリストは以下の10社である。

登壇したファイナリスト10社 (アルファベット順)
1.㈱アリススタイル→家電・家具等の⾼額な⽣活製品のサブスクリプション型レンタルサービス。
2.㈱エンジニアのミカタ→AIエージェントとエンジニアをセットで派遣する、AI駆動型のシステムエンジニアリングサービス。
3.㈱ファームノート→⽜飼育のIoT機器を提供、データ活⽤による酪農・畜産の⽣産性向上と経営効率化⽀援サービス。
4.Global Mobility Service㈱→⾞両遠隔制御技術と独⾃与信モデルを活⽤したモビリティ⾦融サービス。
5.豊実精工㈱→毒性を持つクロムを使⽤しない独⾃の表⾯処理技術を活⽤した⾦属表面処理技術を提供。
6.JPYC㈱→⽇本円と1:1で交換可能な⽇本円連動型のステーブルコインJPYCを発行・運営する⾦融インフラを提供。
7.㈱カウシェ→アプリゲーム内で育てた作物が実際に届く機能やユーザー投稿機能を通じ、新たな購買体験を提供するショッ ピングアプリの開発・運営。
8.㈱LIFESCAPES→脳活動と連動するBCI技術を活用、重度麻痺の回復を支援するウェアラブルリハビリ機器を開発。
9.ナッジ㈱→推しアーティスト・キャラクター等の応援に特化したクレジットカードを提供、複数の“推し活”を⽀援する⾦融サービス。
10.㈱Zehitomo→依頼条件に合う事業者をAIが提案、リフォーム・修理などのニーズに最適なプロとマッチングするプラットフォームを運営。
今年も多岐に亘った分野から選出された。いずれも社会課題を解決するための独創的な発想と独自技術を持つテック企業が選出された。本番のピッチはどの人もパワフルで、動画やパワポ資料を駆使、規定時間内で熱気あふれるピッチが繰り広げられた。
■優勝は㈱カウシェが獲得

優勝カップを手にする㈱カウシェの門奈剣平代表
接戦だったためか結果発表は19時30分を過ぎていた。2026年東京大会で優勝を勝ち取ったのは㈱カウシェである。門奈剣平代表には大きなトロフィーが贈られた。同社は「新しい生活圏のカタチをつくる」をビジョンに掲げ、ショッピングセンターなどでの買い物のように、オンラインで友人や家族とコミュニケーションを取りながら、買い物を楽しむ体験を作りたいという。接戦を制して優勝トロフィーを手にした門奈代表には会場からは惜しみない拍手が送られた。
同社は11月4日からアメリカ・サンフランシスコで開催される世界大会に出場する切符を手にした。そこで優勝すれば100万ドル(約1億5千万円)の出資を獲得することができる。
尚、第2位には、独自与信と遠隔制御技術で、信用情報を持たない人々にも自動車ローンを提供するGlobal Mobility Service㈱、そして第3位には、毒性を持つクロムを使用しない独自の金属表面処理技術を提供する豊実精工㈱が選出された。

左から2位のGlobal Mobility Service㈱、優勝の㈱カウシェ、3位の豊実精工
スポンサーの特別賞としては、㈱LIFESCAPESに投資賞金5,000万円の「ジャパネットグループ賞」が授与された。またJPYC㈱に投資賞金5,000万円の「ALHD賞」が授与された。
終盤に開催されたパネルディスカッションでは、アイリスオーヤマ大山晃弘社長らが登壇、「AI時代、日本企業はどう変わるべきか」と題して熱い議論が交わされた。
主催者であるペガサスのアニス・ウッザマン代表は、「このピッチ大会の予選は世界135か国以上の国と地域で開催、各地の代表が11月、サンフランシスコの世界大会に集結する。日本からも毎年素晴らしいスタートアップが登場。第1回と6回は日本が優勝し、100万ドルの出資を勝ち取った。世界中の有望なスタートアップを発掘し、大企業とマッチングするのがわが社の使命」と語った。
当日は、総務大臣の林芳正氏、財務大臣の片山さつき氏が駆け付け、スタートアップエコシステムの活性化について熱く語った。
最後は審査委員を務めたアステリアの平野社長が挨拶、「10社すべてが高水準で、選考は困難だった」と語り、11月に開催される世界大会での健闘を祈った。
今回で8回目ということもあり、元気なスタートアップがエントリー、また高校生以下のユースピッチ大会もあり会場はひときわ盛り上がった。さらに多くのスポンサー企業も駆けつけ、大会を盛り上げた。また会場隣では100社のスタートアップ展示会も同時開催され、多くの人で賑わった。米ペガサス社主催ということもあり、盛りだくさんの内容で会場に駆け付けた聴衆を沸かせた。
11月の世界大会には、カウシェ他、名古屋大会、熊本大会の優勝企業の3社がエントリーすることとなる。11月の世界大会で日本企業が優勝を勝ち取ることができるのか、楽しみだ。