会社名や組織名・役職・内容につきましては、取材当時のものです。
2018年度の訪日外国人観光客が3000万人に達する見込みだ。宿泊需要の高まりから東京、大阪などの都市部ではホテル不足が心配される。ここ数年はインバウンドを追い風にホテル建設ラッシュである。ホテル宿泊客満足度調査(1泊9000円未満部門)において5年連続第1位を受賞したスーパーホテルが満を持して銀座に新コンセプトのホテルをオープンした。聞き手は: 本誌編集長 徳永健一
問 2018年10月19日に東京・銀座に新しいコンセプト「スーパーホテルPremier 銀座」をオープンされましたね。
山本 東京でホテル事業を展開していく上で、いつかは銀座に出したいと考えてきました。弊社では土地のオーナー様に建物を建てて頂いて、借り上げるスタイルが通常ですが、銀座エリアではなかなか案件がありませんでした。それでは土地を購入しようと考えても物件は出てきません。幸運にも知り合いの中から「やってみませんか」とご紹介があり、念願であった銀座にホテルをオープン出来ました。
問 立地も「昭和通り」に面していて分かりやすく、東銀座の交差点からも近い場所ですね。
山本 銀座四丁目の交差点からも徒歩数分と近く、食事が出来る店も多く、便利なエリアだと思います。そもそも銀座エリアでは大きなホテルを建てたくても場所が見つかりませんね。
問 銀座店では、どのような客層を想定していらっしゃいますか。
山本 ビジネスでもVIPが多いでしょう。部長職以上でしょうか、地方から来られる方は役員や経営者層の方が多いですね。また最近はIT関係でしたら宿泊費1万3000円位は出る会社もあるようです。
また、東銀座の歌舞伎座のすぐ近くですから、歌舞伎を見に来る中年の女性も多くいらっしゃいます。まだ海外からのインバウンド客は少ないです。まず地方のお客さんに認めてもらってからだと考えています。
問 今後も東京エリアでホテルのオープン予定はありますか。
山本 はい、現在、建築中なのは秋葉原と浜松町です。秋葉原はワシントンホテルと神田川を挟んだ対岸に2019年10月にオープン予定です。浜松町は駅と増上寺の中間にある大門の辺りで19年2月にオープン予定です。
問 これまで「スーパーホテル」と「ロハス」という上位カテゴリーがありましたが、今回の銀座店では「プレミア」ということですね。
山本 我々としては、ワンランク上のシリーズを研究してきました。そして、やるからには立地を選ばなければならないと考えてきました。銀座はそのコンセプトに合致していますので、第一弾として発表させていただきました。
次は大宮です。スーパーホテルとの価格差は変動しますが、約2000円です。
問 「プレミアシリーズ」で大切にしているコンセプトとは何でしょうか。
山本 現在はホテル建設ラッシュです。東京では多くのホテルがオープンしています。2020年東京オリンピック開催で海外からのインバウンドが伸びることが予想されています。問題はオリンピック後です。東京のホテル需要が減ることはないでしょうが、大阪や京都など、東京以外の場所は供給過剰になると言われています。
そのとき、どういうホテルがお客様に喜ばれるか考えていなければなりません。デザインの良し悪しなどハード面が注目されますが、ホテル業はサービス産業の最たるものだと捉えています。ビジネスホテルもコンセプトを明確にすることで、私たちの考えに賛同頂ける方がリピーターになってくれると信じています。
今後のホテルのラグジュアリーは何かと考えた際に、弊社ではエコを追求してきました。資源は有限ですから、地球環境に優しい「ロハス」をコンセプトとして打ち出してきました。
そこで「プレミア」では、もう一つ掘り下げて、コンセプトを明確にしようと社内で話し合った結果、「ナチュラル」「オーガニック」「スマート」の3つを命題にして深化させ、地球と人にやさしいホテルとしてお客様に感動をお届けしようと思います。
社会に役立つ良いことをしていると社員は燃えてくれる。従業員のモチベーションは上がります。それが顧客の満足度にもつながってきます。
経済的価値と社会的価値を同時に創造するCSVを目指しています。社会に良いことをしながら、しっかり収益も成立する経営を目指すことは、正しい企業のスタイルだと考えています。
(後編へ続く)
P r o f i l e
山本梁介(やまもと・りょうすけ)
1942 年大阪府生まれ。64 年慶応義塾大学経済学部卒業後、蝶理に入社。67年に家業である繊維商社に入社。1996 年福岡にスーパーホテル1号店を開業し、1997 年より現職。2013 年第15 回企業家賞チャレンジャー賞受賞。2014~18年、J . D . パワー「ホテル宿泊客満足度調査」にて5年連続1位を受賞。
(企業家倶楽部2019年1・2月合併号掲載)
(関連記事:編集長インタビュー スーパーホテル会長 山本梁介 後編)